植物の糸ができるまで

<苧麻の繊維をとりだす>

苧麻(ちょま)は、イラクサ科の植物で、からむし、青苧(あおそ)などとも呼ばれます。多年草なので、一度植えると毎年芽を出します。
昭和村ではよい繊維をとるために年1回しか収穫しませんが、沖縄のようにあたたかい気候のところでは年に3~4回収穫できるそうです。
我が家の小さな畑では、年に2~3回ほど刈り取りを行います。

苧麻の苧ひきは、1日ずつ行うのが原則。収穫だけたくさんしておいて~というような“とりだめ”はできません。早朝、その日のうちに作業できる分だけを収穫します。

刈り取った苧麻は、まず葉っぱをすべて落として茎だけにします。

すべての茎の葉っぱを落としたら、抱えられるくらいの束にまとめ、皮をはぎやすくするためにしばらくきれいな水に浸けます。

茎の根本のほうを2つに折り、先端に向かって指で皮をはぎ取っていきます。

はいだ皮は束ねて水に浸けておきます。

「ひきご」という道具を使って茎の外側のかたい部分をこそぎおとすと透き通った繊維がでてきます。

ひきたての繊維は白いリボンのようで、艶と光沢があってとてもキレイです。

繊維は小分けにして束ね、風通しの良いところで「かげ干し」して乾燥させます。

繊維が乾燥したら、束にまとめて直射日光の当たらない場所に保管します。



<糸を績む>

苧麻や大麻などの植物繊維(靭皮繊維)の糸づくりをすることを「糸を績(う)む」といいます。
まず、繊維を1本ずつ手にとり、細く裂いていきます。

細く裂いた繊維を手にとり、撚りをかけてながら1本につないでいきます。
糸績みは、昔から雪に閉ざされる長い冬の間の女性たちの仕事であり、春先になると冬にたまった糸を使って織りがはじまったのだそうです。

つないだ繊維は、はじまり(根元)のほうから苧桶に入れてためていきます。
苧桶に蓋をしたときに蓋が少し持ち上がるくらいの量をつくると、100匁くらいといわれています。
100匁の糸は、男帯(幅2寸6分~3寸)のタテ糸2本分、女帯(幅8寸1分~2分)のタテ糸1本分になります。

苧桶にたまった繊維はブンブン(糸車)で撚りをかけて糸にします。

昭和村では、昔から「たいらな気持ちでないとよい糸ができない」といわれています。

撚りをかけた糸は、木枠に巻きなおして糊づけをします。

タテ糸を準備して、やっと機織りが始まります。